秘密のお誘い

 私が本格的にSMの世界へと足を踏み入れたばかりの頃。
 SM繋がりの先輩調教師さんにお誘いを受けて足を運んだ催しのお話しです。

 当時の私はとあるご縁があって、ごく小規模な「SM同好会」の催しによく招待されていました。
 「SM同好会」と言っても会員じみた制度はなく、ただ同じSM趣味を持った人達が人づてに集まって飲み会や緊縛講習をする程度のユルい会だったのですが。

 その会の最年少(だってまだ20歳頃)でまだまだ調教主としての経験や知識といった深さが無かった私は、会の皆さんから「手のかかる子」のように可愛がられ、色々な催しに声をかけて貰っていました。

 そんな折、いつも気さくに声を掛けて下さる40歳前後の先輩調教師さんから「秘密の会合」のお誘いを頂いたのです。
 「ただ観てくれるだけでいいから。勉強にもなると思うよ。
 という誘い文句と共に、日時と場所を伝えられました。

 指定された当日、先輩調教師さんと合流して通されたのは某外資系ホテルの1室。
 そこには初めてお会いする2組のカップルさんが先客としていました…。

 ここで便宜上仮名を付けて、わかりやすく登場人物をおさらいしますと…

・私を誘ってくれた先輩調教師さん…A先輩

・先にいたカップルのうちの1組
 男性(調教師さんでした)…B師
 女性(B師の性奴隷嬢でした)…C嬢

・先にいたもう1組のカップル
 男性(私と同い年くらい?)…D男さん
 女性(同上)…E子さん

・そして…私。

謎めいた会合

 全員が揃ったところで、私に「秘密の会合」の主旨が初めて説明されました。
 簡単に箇条書きしてみますので、整理しながら読み進めていって下さいね。

・C嬢がバイセクシャルで、男性相手には被虐性向(M)、女性相手には加虐性向(S)になるという変幻自在な性癖をお持ちとのこと。

・そこで、C嬢への調教時にM女性を招き、SプレイとMプレイを同時に味わって貰おうとB師が計画。

・B師はA先輩に協力を求め、A先輩は調教に参加して貰えそうなレズM女性を募集する事に。

・するとD男さんからWEB上でコンタクトがあり、セフレのE子さんを差し出したいとの旨。E子さんはもちろん了承済み。

・調教はB師とC嬢、E子さんで行い、その一部始終をA先輩とD男さんが見守る、という流れに。

・更に、全くの第三者の視線が欲しいという話になり、A先輩が「会の誰か」を連れてくると約束。

・「会の誰か」の第一候補が私だった…。

 …というAVにもないような摩訶不思議なシチュエーションに私はただ動揺するばかりでした。

 私は当事者でないので調教の詳細については割愛しますが、それはもう極端なまでに異次元な調教絵図でしたよ。
 C嬢はもちろんE子さんも、性に対する欲望に正直で貪欲で、また自由に楽しんでいるように感じました。
 それを上手に操るB師の調教手腕にも脱帽しました。

 調教後に皆さんとお話しをしたのですが、E子さんは「Hは好きですし、何事も経験ですから~アハハッ」と笑い飛ばし、C嬢は「ご主人様に喜んで頂けるなら私は何でもできますよ」と何食わぬ顔。

 私は自らの性的な世界観が狭すぎる事をこの時初めて自覚したのです。
 調教師になるにはまだ力不足なんだと痛感しましたね。

 あの時から10年ほど経って、私が調教主として今に至るまで活動しているのは、あの時の鮮烈さが私の性的な世界観をぶっ壊してくれたからだろうと思います。
 確かにE子さんの言う通り「何事も経験」なのかもしれませんね。


エロスを真剣に語る 日本と海外の「性」