SMって具体的に何をするの?

■実際に「SM」として行われているコト。
 SMの定義や基本的な解釈は前章「SMとは・・・?SMの基本のキホン」に書きましたが、正直なところ実際に行われているSMはそこまで形式ばっていないのが実情です。
 そもそも一般的に「SM」とされるカテゴリーは物凄く抽象的な位置付けになっていて、どこまでをSMとして内包するかの判断は当事者である加虐者と被虐者に委ねられているという曖昧な世界です。
 なので、加虐者・被虐者の欲求や趣向によってフェティシズム(フェチ)や異属性の性的嗜好を融合して2人だけのSM世界観へと発展していく場合が殆どなのです。
 SMとは謂わば「性のヤミ鍋」みたいなものですね。

 ただ「何でもアリ」という訳ではなくて、「主従と信頼関係」「加虐と被虐」といったSMの主軸を揺るがせてはいけません。
 精神を扱う性戯だけに、難解さも持ち合わせている世界なのです。

 それではSMを経験した事がない人はSMをどうイメージすれば良いのか…。
 「人それぞれ違う」じゃ具体的なSMの世界を知る事はできませんからね。
 なので、代表的な調教のスタイルとプレイをそれぞれ幾つかご紹介していきましょう。
 まずはスタイルを、次いでプレイの順に掲載していきます。

調教の代表的なスタイル

支配者と奴隷
 加虐者は支配者となり、被虐者を奴隷に見立てて心身的責苦を与えるというものです。
 典型的なSMのスタイルと思われがちですが、実は加虐者・被虐者ともにある程度以上の経験を必要とします。
 立場上「支配者は奴隷に情けをかける必要がない」という絶対的優位性を肯定しているので、必然的に加虐者の趣向や攻撃性が調教における全てを支配する為です。
 加虐者は自身の欲求を暴走させない覚悟、被虐者は無防備なまま加虐者の責苦を全て受け止める覚悟がそれぞれ求められます。

飼い主とペット
 加虐者は飼い主となり、被虐者をペットに見立てて調教を行うというものです。
 ペットと言っても被虐者が動物に成りきる必要はなく「加虐者に飼われている」という立場であれば成立します。
 飼い主はペットに芸や躾を仕込み、褒美や罰という形で快楽と責苦を与えていきます。
 加虐者には被虐者に対する情け、被虐者には加虐者に対する忠誠心がそれぞれ求められます。

所有者と家畜
 加虐者は所有者となり、被虐者を家畜に見立てて調教を施すというものです。
 上記と同じく被虐者が「家畜として加虐者に所有されている」という条件付けの分類なので、動物に成りきる必要はありません。
 被虐者を家畜扱いする事でペットとは明確な差を設け、また「家畜」は財産なので奴隷以上の最低限の価値を認めています。
 所有者は家畜に徹底した躾を施しますが、かと言って家畜の価値が下がるような残忍な扱いはしません。
 加虐者にはプレイの質、被虐者には加虐への耐性がそれぞれ求められます。

調教師とマゾヒスト
 SMの語源そのままの名称ですが、「主従」という関係に重きを置かず、調教の質のみに拘るという割り切ったスタイルです。
 加虐者と被虐者のどちらか(もしくは双方)が経験や腕前に秀でている場合、その人と調教を行う事でプレイ技術や性的快楽の開発といった成長を得る狙いがあります。
 「貸出調教」や「委託調教」のように加虐者が主従関係にある被虐者を「敢えて」別の加虐者に調教してもらう場合、このような割り切ったスタイルになりやすいです。
 精神的快楽よりも身体的性快楽に著しく偏っているので、良くも悪くも表面的なSMと言えるでしょう。

人間と動物
 被虐者をペットや家畜に条件付けするのではなく、厳格なアニマルロールプレイとして忠実に「動物」である事を必要とするスタイルです。
 このスタイルの場合加虐者は管理者となり、動物に成りきった被虐者の管理をするという「人間と動物」の立ち位置に焦点が置かれる為、性行為や責苦は必須ではありません。
 「ポニープレイ」と俗称される位なので馬に成りきらせる場合が多く、餌を与え、ブラッシングをし、躾を施し、排泄を管理し、必要があれば異性の他馬(被虐者)と種付けさせる等、被虐者に対する扱いは厳格過ぎる程に忠実です。
 身体的性快楽よりも精神的快楽に著しく偏っている点で「調教師とマゾヒスト」とは好対照なSMスタイルですね。

人間と物
 上記5つのスタイルは被虐者の価値条件に違いはあれど命ある存在として扱われる事に共通点がありましたが、このスタイルにおける被虐者の扱いは「物」であり、命(=心)の存在を認めていません。
 被虐者の心を無視するのではなく、「そもそも被虐者に心など存在しない」という前提の元に成り立っているストイックなスタイルと言えます。
 「人間椅子」「人間便器」等のポゼッションプレイは正しく被虐者を椅子や便器という「物」に見立てて扱う有名なプレイですが、嗜好が限定される為か知名度ほど普及はしていません。
 それよりも被虐者をSEXドールのような「性玩具」として加虐者の一方的な性的欲求の捌け口に扱われるスタイルが好まれます。
 いずれにしても被虐者には精神的にも身体的にも多大な負担がかかるので相当の覚悟が必要です。

 …他にもスタイルは多様に存在するのですが、代表的なものはこれ位にしておきましょう。
 次は代表的なプレイについてです。

調教の代表的なプレイ

責苦を目的としたプレイ
代表例:鞭やスパンキング等の殴打、水責め、蝋燭プレイetc...

 加虐者・被虐者の純粋な攻撃欲求を満たす為に身体的責苦を施すプレイ群です。
 罰や躾といった戒めで責苦を与える場合と、責苦によってアドレナリンを強制放出させ超越した快楽を与える場合があります。
 戒めの責苦は精神的快楽が重視され、超越の責苦は身体的快楽が重視されます。
 どちらにしてもSMの根幹であるプレイ群なので、調教においては中心的な存在と言えるでしょう。

快楽を目的としたプレイ
代表例:強制絶頂や絶頂回避、無限絶頂等のオーガズムコントロールetc...

 調教である以上、単純に性的快楽のみを得るプレイというのは存在しません。
 性的快楽には必ず何かしらの条件付けがされていて、快楽ですら責苦となるようなプレイや性的快楽に精神的辱めを含めたプレイ等が殆どです。
 「ご褒美」として快楽が与えられる事もありますが、その場合であっても素直に絶頂まで導かれる事は稀ですね。
 絶頂に達した場合は罰として責苦を…なんて場合は快楽と責苦の無限ループに突入します。

辱めを目的としたプレイ
代表例:露出命令、言葉責め、放置プレイetc...

 被虐者に精神的加虐を与える事に主眼が置かれたプレイ群です。
 精神的に追い詰めていく事で被虐欲求が昇華され、被虐者がより大きな性的快楽を得られるようになります。
 加虐者と被虐者の立場を明確にするプロセスにおいてプレイされる事が多いですが、主従における絶対的な主導権を誇るために敢えて無理難題を命令し辱める事もあります。
 被虐者には命令に対する「拒否」も辱めに対する「否定」もできませんので、精神的責苦は相当なものになります。

背徳を目的としたプレイ
代表例:拡張やピアッシング等の肉体改造、アナルプレイ、尿道プレイetc...

 背徳というのは簡単に言うと「理性に背く事」で、社会生活における常識から逸脱する事で覚える自己の罪悪感を精神的快楽に転化させているのがこのプレイ群です。
 そもそもSM自体が背徳の世界ではありますが、変態的性行為を強制し被虐者に背徳感を強いる事で性的快楽とは違う興奮を生み出すのが狙いです。
 例えば膣拡張やアナル拡張といったプレイは本来の身体機能からすれば不必要な行為であって、それをされるという事は変態性癖以外のナニモノでもありません。
 加虐者に身体を弄ばれ変態性癖に染まる事の背徳感は自己犠牲願望や破滅願望によって被虐欲求へと昇華していきます。

服従を目的としたプレイ
代表例:奉仕、SEX、オークションプレイetc...

 奉仕というのはオーラルセックスの類で、SEXも含めて「ノーマル」な性行為だと認識されていると思いますが、SMの場合はそうでもありません。
 そもそもSMにSEXは必要不可欠なものではなく、あくまでプレイの選択肢の1つだという考え方です。
 奉仕は加虐者が被虐者に対して服従心を示させる為でもあり、強制させる事で被虐者の尊厳を貶めるという精神的責苦を狙ったプレイになります。
 SEXは「ご褒美」の一環であり、また「凌辱」の背景を持たせている事が多く、ノーマルなSEXとは程遠いプレイである場合が殆どです。
 他に被虐者の絶対服従を煽る目的で「品評会」や「オークションプレイ」等、第三者の面前で調教を行ったり他者からの調教を強制されるといったプレイも存在します。

 …とまぁプレイの分類はこんな感じでしょうか。
 実際の1つ1つのプレイには「責苦+快楽」とか「背徳+辱め」のように複数の要素が絡んでいるものなのですが、便宜上ここでは5つのプレイ群に分けてあるだけです。

 さて、これで何となくSMの世界を把握できたでしょうか?
 まだまだ分からない事も多いとは思いますが、あとはもうやってみるしかないのかもしれません。
 最後に、よく頂戴するSMの疑問について予め回答を用意しておきましたので、アナタの「?」に当てはまるものがあれば是非参考になさって下さい。

■第三章・誰にも訊けないギモン…
SMのQ&A
こちらにお進み下さいね。